my views and experiences
私はマーケットをどう見るとか相場観といったものについてほとんど語ってきませんでした。私が皆さんに紹介してきた、そして今なお紹介しているオプション・ストラテジーやその背景にある基本的な思考と志向(“マネー”とは何か、「仮想的空間」(「情報空間」)と「物理的空間」、会計学とキャッシュフロー、デリバティブズと金融、オプション・デリバティブズ・マネーの関係、銀行とは何か、銀行の歴史等、OCFCが目指すもの等)は株式“投資”や株式“トレード”の概念とは異なります。私自身そのような世界からは身を引き皆さんと同じOCFC会員の立場に立っています。
皆さんはここ数日でボラティリティ(ここではVIX指数に代表されるボラティリティを意味します。)の凄まじい動きを見られたので驚かれたかもしれません。私の経験や見方が少しでも役に立つなら・・・という思いで以下のことを述べます。
私はここ数日間のボラティリティの動きについてほとんど全く驚いていないのです。私は2007年9月に発生したいわゆる「リーマンショック」の当時ニューヨークのリーマンブラザースの本社から徒歩で5分以内の街中に住んでいました。だから、その当時のことは今でもはっきりと憶えています。2011年の欧州危機のときはロンドンに行っておりその当時のこともはっきりと憶えています。遡って1987年の「ブラックマンデー」の当時は日本におりましたが、その直後にロンドンに移り住むことになりました。今のようなインターネットの時代からは想像できないローテクの時代でしたが、当時のロンドンは世界で最も活発に株式オプションが取引されていた金融都市でした。また、ボラティリティ指数がない時代でしたが、ボラティリティとは何かといったことについて理論や理屈より肌で感じ取りました。そうやって「マーケットのからくり」ともいえるものが何となくみえてきたのです。
皆さんは改めて読まれる必要はありあせんが、拙著『数字の変化が映し出す投資の原則』と『私はこうして投資を学んだ』には日記が掲載されています。その日記は読者に楽しんで読んでほしいという配慮からややエンターテイメント風に書かれた箇所が随所に見られます。たとえば、リーマンショック直後にプットが権利行使されて株式を持つことになったSBUX(スターバックス)は当時株価が10ドルを一時下回っていました。SBUXの株価が上がってほしいという思いで当時の私にできた唯一のことはニューヨーク市内のスターバックスの店に毎日出向いてコーヒーを飲むことでした。その結果どうなったか。皆さんは私の“貢献”をSBUXの株価チャートで見ることができます。エンターテイメント風ではありますが、それらの日記の中にはボラティリティと株式マーケットのからくりに言及した箇所もあります。
現在のSBUXは「リーマンショック」当時とは比べようもない優良銘柄に成長しました。「なぜ優良銘柄を取り上げないのか。」・・・そのようなご質問を受けました。かつて私が慣れ親しんだいわゆる優良銘柄の多く(“ほとんどすべて”といっていいでしょう。)は株価が相当に高い水準まで登り、そして、ボラティリティ水準が相当に低い位置まできてしまいました。一方で、私はボラティリティが100%を超えるような銘柄の株式オプションに力を入れるようになりました。高い水準のボラティリティが生むキャッシュフローの魅力に取りつかれたのです。そのような銘柄の最大の懸念はデフォルトリスクでした。その対策で徹底した分散を図るようになりました。そして、経験からデフォルトは簡単には起きないという不思議な自信をもつようになりました。それでも「分散」は怠りません。仮に数学的あるいは統計的確率において「それは99%起きえない。」というのは「それが明日起きる。」ということと同義だからです。
さて、はじめに述べた「私はここ数日間のボラティリティの動きについてほとんど全く驚いていないのです。」という部分に戻ります。私はそれを予測していたのではありません。ただ何となくそれ(平均株価の急落に伴うボラティリティのスパイク)が起きたら悪くないなあと感じていたのです。
私はかつてS&P500に連動しているSPYのオプションが好きでした。わかり易かったからです。ところがその株価水準が150ドルを超えたあたりから取引の対象としては魅力が失われました。ましてや200ドルを超えたところからなおさらそうなりました。株価水準があまりにも高くボラティリティの水準が低すぎる位置に停滞していたからです。それは個別の優良銘柄についてもいえました。JNJ、WMRT、COSTなどをご覧ください。それらは私のお気に入りの銘柄だったのです。
「ただ何となくそれ(平均株価の急落に伴うボラティリティのスパイク)が起きたら悪くないなあと感じていたのです。」というのはそのときに優良銘柄のボラティリティが跳ね上がって魅力度が増すのを期待してのことでした。
私は“それ”(平均株価の急落に伴うボラティリティのスパイク)が起きたときにどうなるかを想像してみました。ボラティリティと株式マーケットの“からくり”からいえば私たちが実行するストラテジーにとって好条件がそろうということです。私は条件がそろえば平均株価のボラティリティを売ることの代替ストラテジーとしてTNAプットを売りたいと思いました。TNAの株価を私は“株価”というより“逆変動ボラティリティ”とイメージしています。TNAの株価が80ドル台だったとき、私はそれについて“逆連動ボラティリティ”なので、“順”のボラティリティは低いと感じていたのです。そこで、ボラティリティがいつスパイクしてもいいように、つまり、“逆連動型ボラティリティ”としてのTNAの株価がいつ急落してもいいようにOTMのプットで“P-1/P+1”を組んだのです。それは”見切り発車的“ですが、十分にプロテクト(保護)されたものだったのです。
では、「優良銘柄」をどう見ているのか。現在の状況でそれをどう扱うのか。
次回それについて述べたいと思います。