Essence of “the Strategy”
私より皆さんの方が根気強い・・・皆さんとのやり取り等を通じて最近私はそのように感じるようになりました。私たちが実践している“ストラテジー”(私たちの実践している「“オプション”取引」を総称して“ストラテジー”と呼びます。)について私はそれについての技術的なことだけでなく背景にあるしくみ、構造、概念、哲学、歴史、物事の考え方や見方について長い時間をかけて日々少しずつ述べてきました。そうしてやっとたどり着いたのが「コインの表側」と「コインの裏側」の話です。今年は何とかその話のところまでたどり着こうと考えていました。まだ、通過点に過ぎないのですが、非常に重要な通過点です。
私の最大の懸念は、私がより本質的でより重要な内容を含む話を伝えきらないうちに・・・それは“ストラテジー”の本質は“相場”ではないということなのですがその一言に至るまでに非常に多くの内容を伴ったストーリーを伝えなければなりません・・・皆さんが“相場”変動に揺り動かされて場外に身を投げ出されてしまうのではないかといった恐れでした。
今年を振り返ると私の懸念がピークに達したのは8月でした。当時を振り返ると、中国株式マーケットの連日の急落の影響で世界の金融マーケットが動揺し世界的なボラティリティの指標としてみなされているVIX指数が40ポイントに達した局面がありました。私自身はそのような出来事を全く気に留めていませんでした。皆さんもそうであってほしいという願いから補足説明を含んだレポートを配信しました。それは杞憂だったようです。その時点で皆さんは“ストラテジー”のエッセンスと呼ぶべきものを既に十分に掴んでいたと、その後の幾人かの方々とのやり取りで感じ取れました。そして、他の多くの方々についても同様だと思うようになりました。
多くの方々(皆さんにアンケートを取ったわけではありませんが、“多くの”というより“ほとんど”だと感じられます。)はストラテジーBの実践が中心で、そこで私の取り上げる対象(“銘柄”という言葉より“対象”と呼ぶことにします。取引対象の“対象”です。)は控えめに言ってもS&P500に代表される米株式マーケットやVIX指数に代表される米株式オプションの平均ボラティリティからかけ離れたものです。FRBの金融政策の影響もほとんど関係ありません。世界の事情ともほとんど無縁でそれぞれの対象の個々の事情によって株価やボラティリティが形成されています。“唯我独尊”ともいうべき対象を扱っています。本来の意味との間にズレがありますが、世界で何が起きても我関せずといった対象を扱っているということです。
さらに、重要なことは私たちが“ストラテジー”を実践する目的は“相場”の波に乗ってキャピタルゲインを得ることではないということです。積み重ねればそれよりもずっと大きな量になる“価値”を仮想的現実の中で創り出すことを目指しています。
私たちの仕事を阻む要素は“相場”ではなくむしろシステムといっていいかもしれません。私が現在懸念しているのは私たちの取引を仲介しているブローカーのシステムです。彼らのポジション管理システムは私たちの意図や目的を意に介しません。私たちはオプションを先物取引のように扱っているのではなく現物として扱いキャッシュフローを最大限に配慮しています。一方、ブローカーは私たちを先物取引者(“スペキュレーター”)のようにシステム上扱っています。そのようなブローカーの管理システムは“相場”に機械的に敏感です。私たちは“相場”に対してむしろ鈍感であるべきなのですが、ブローカーシステムに目を配るといや応なしにそれを思い出させてしまうといった現象が目に留まります。その最たるものは相場変動に合わせてリアルタイムで変化する”unrealized profit loss”や”net liquidation”の数字の表示システムです。私はそのようなものを見ないようにしています。“ストラテジー”の実践者にとってそれらは余計なお世話なのです。そして、私自身の作成するキャッシュフロー管理表をいつも眺めています。
そこで、VIX指数とVIXフューチャーズからなる“タームストラクチャー”の話に再び戻りたいと思います。
VIXオプションの取引は当初ほとんど取り上げませんでした。
その代わり、S&P500及び同オプションのボラティリティ指数であるVIX指数と関連性の強いETFであるSPXS、TZA、FAZ、SPXL、TNA及びFASの取引例を取り上げ掲げてきました。さらに、最近では、上記ETFよりさらにVIX指数と関連性の強いVXX及びSVXYを加えました。
その間、日々の通信を通じて“ストラテジー”実践に本質的に重要で必要な背景や知識に関して時間をかけて伝えてきました。「コインの表側」と「コインの裏側」についてのストーリーを述べました。それに至るまで十分な時間をかけてさまざまなことを述べて同時にストラテジーBを中心に実践に取り組んできていただいたわけです。
ストラテジーBを含めた“ストラテジー”全般に関わるコンセプトや本質的な考え及び見方、さらに、数の変化に対する感覚や観察眼を養う意味でも“タームストラクチャー”の深みを知っていただくことは役に立つであろうと判断するにいたりました。“タームストラクチャー”はまさに「コインの表側」と「コインの裏側」が混在し本質的で非常に深い内容が含まれています。ストラテジーB、ストラテジーAのいずれに力を入れて実践に取り組まれてもそれの知識は役に立つと思います。
“タームストラクチャー”の数字を基にVIXオプションの取引を実践するとき、私はチェスをイメージしています。チェスは「西洋の将棋」と言われています。あるいは、逆に、将棋を「東洋のチェス」と呼ぶ人もいます。歴史的にはチェスが生まれたほうが早く、将棋はチェスから派生したと言われています。将棋のご経験のある方は「詰め将棋」をご存知だろうと思います。チェスにも「詰めチェス」なるものがあります。余談ながら、私の手元にはチェスの世界チャンピオンのタイトル保持者である故ボビー・フィッシャー氏の著した“Bobby Fischer Teaches Chess”というタイトルの詰めチェスの問題集があります。私はこれを見ながらVIXのタームストラクチャーをしばしば思い出します。
誤解してほしくいないのですが、私が皆さんに伝えたいのはVIXオプションによる相場(“スペキュレーション”)ではありません。また、そのようなマネーゲームとは無関係です。構造を利用して“価値”(“マネー”)を生み出す方法論について伝えたいのです。
ストラテジーBではボラティリティの株式オプションを利用して一度の取引によって大きなキャッシュを一瞬にして作ることが可能です。一方、“タームストラクチャー”を利用したストラテジーAはストラテジーB以上に根気強さが求められます。しかし、いずれのストラテジーにも共通しているのは数によって構成されるしくみ(“構造”)が“価値”を生み出すという点です。
いずれにしても“ストラテジー”の本質は“相場”ではないのです。