“Tail Side of Coin”

発行日:2015年12月02日

皆さんが実践している“オプション”のアプローチやその根底にある考えは、実のところ、純粋に私の経験に基づいています。それはオプションの関する著書や文献には出ていません。そこで、私の経験が皆さんにとって何等かの役に立つことを願って以下のことを述べます。

私がオプションに出会ったとき、私はマーケットや投資についての知識もなく経験もありませんでした。数学の分野に応用数学という分野がありそれは数学の理論を実務に応用するための学問でした。当時米国に住んでいた私はその中でオプションに出会いました。それは確率や統計を基にした理論でした。のちに、株式オプションを知ったわけですが、私が読んだ金融商品としてのオプションに関する著書には、それを“トレード”していかに利益をあげるかということについて書かれたものばかりでした。

実際、私が当初オプションを利用して行ったのは投機的な行為でした。ところが、オプションを取引した後で手元に届いたステートメント(当時は、インターネットはなく、ステートメントを証券会社の窓口ももらうか郵送してもらっていました。)をみてあることに気づいたのです。それはバカバカしいほど単純なことでしたが、私にとっては意外な発見であり嬉しい驚きでした。証券会社からもらった株式オプション取引のステートメントはまるで銀行のステートメントのようでした。(米国には日本のような預金通帳はなくキャッシュの出入りを示したステートメントが毎月発行されていました。)
“発見”とはオプションの取引によってキャッシュが動くということで一般的にみれば“発見”というほどのことではなかったのですが、まるで大発見のようにうれしく感じたのです。なぜなら、“トレード”による利益ではなく、オプションを取引したという事実だけでステートメント上キャッシュが増えていたからです。

それは単にステートメント上の数の動きに過ぎないのですが、証券会社の窓口に問い合わせると、その増えた数(キャッシュ)は引き出して使うことができるということでした。私はこの単純な“発見”をもっと理論的に知りたいと思い、当時手に入れることのできたオプションに関するあらゆる著書と文献を見つけては読み漁りました。当時はオプションに関する著書はほとんどありませんでした。当時最も有名かつ最も売れていたオプションに関する著書はLawrence McMillanの“Options as a Strategic Investment”でした。投機としてオプションを利用するトレーダー向けの著書で当時それは非常によく売れていたのを憶えています。しかし、その中に私の知りたいことは一切書かれてありませんでした。他には学術誌に掲載されたオプションの理論価格を算出するモデルについて記事がある程度でした。

私はオプションについて2つの顔をもつことになりました。私はそれをコインの「表側」と「裏側」として扱ってきました。「表側」は“トレーダー”としての顔です。「裏側」は今現在皆さんに実践していただいている“ストラテジー”の実践家としての顔です。「裏側」が私の本来もっとも興味をもって実践してきたものですが、理論的に第三者に説明する自信がなかったことと、「表側」のキャリアの方が一般に受け入れらので、コインの「裏側」は長い間私の中に留めておきました。

日本に帰国後、私もオプションに関するいくつかの著書を世にましたが、それらの著書のいずれにおいても現在皆さんに実践していただいている“ストラテジー”にほとんど触れていません。

皆さんに現在の“ストラテジー”とその背景のある考えについて紹介するようになったきっかけは私が会計学を齧るようになってからです。会計学を皆さんに少しずつ学習することを勧めているのはそのような私の経験が背景にあります。さらに、金融の歴史やシステムについて知るようになったことも背景の中に含まれます。

さらに、以上の過程の中で、“マネー”とは何かについて考えるようになりました。そうして、私は上述のコインの「裏側」が本来「表側」に来るべき世界であると認識するようになったのです。